『アイム・ノット・シリアルキラー』味のあるフィルムで、繊細・チープなSFサイコホラー

  • 2021年3月2日
  • 2021年3月16日
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こんにちは、そらとぶこあらです🐨

 

今回は『アイム・ノット・シリアルキラー』を紹介していきます。

 

〜詳細〜 
ソシオパス vs シリアルキラー 殺人現場にはヘドロが、、

原題: I AM NOT A SERIAL KILLER

製作国: アイルランド、イギリス

製作年:2016年

上映時間:86分

ジャンル: ホラー、サスペンス、サイコ

監督: ビリー・オブライエン

脚本: ビリー・オブライエン、

クリストファー・ロイド

キャスト: クリストファー・ロイド、

マックス・レコーズ

配給:松竹メディア事業部

 

キャストに「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のドク役のクリストファー・ロイド、「かいじゅうたちのいるところ」のマックス・レコーズが共演しています。

 

二人がキャラにぴったりの良い演技すぎて、調べてみるまで全然気付きませんでした!

 

マックス・レコーズは葬儀屋の息子でソシオパスという心の闇を抱えている役なのですが、演技力がすごかったです🐨笑顔ひとつでも、とても不気味で、それが良すぎる、、、

「かいじゅうたちのいるところ」の頃とは全然違う、闇を抱えた人の演技が似合う大人に成長していました!

 

クリストファー・ロイドはお隣の家のお爺さんで、ゆったり老後の毎日を過ごす愛妻家です。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドクからは想像できないようなヨボヨボの姿🐨作品でも実は死にかけなんです、、大変だ!!

 

ホラーですが、びっくり驚くような場面もなく、そこまでグロテスクな描写もないので、邦画のホラーなどが苦手な怖がりの方にはオススメの映画です!指の隙間から見なくても大丈夫です🐨

王道の怖いホラー好きの方は、なんじゃこりゃ??となってしまうかもしれません。

あと、B級映画が好きな方にはオススメです🐨

 

〜あらすじ〜

 

舞台はアメリカの中西部の町、マックス・レコーズ演じるジョンは、葬儀屋の息子でその影響からか死に異常な関心を持つ16歳の男の子。家に運ばれてくる遺体の防腐処理も手伝い、死体を見つめる目は好奇心に満ちて嬉しそうにも見えます。

ジョンは学校でも少し浮いているようで、定期的に受けているカウンセリングではソシオパス(社会病質者)だと言われていました。

 

ある日、町で奇妙な連続殺人事件が発生します。現場には謎のヘドロがあり、死体は内臓の一部が抜き取られていました。

連続殺人鬼に抑えられない強烈な興味を持ったジョンは、犯人を突き止めようとします。

すると偶然殺人現場を目撃し、犯人に接触しようとするジョン、、。犯人は意外な人物で、次々人を殺していきます。

普段、殺人を犯さないように厳しいルールを自分に課すジョンは、殺人鬼と接触する事で何を得ようとしているのでしょうか。ジョンも殺人鬼となってしまうのでしょうか。。。

そして犯人が人を殺す理由は。。。

 

〜ネタバレあり〜 感想

 

今回は結構詳しく見どころを書いていこうと思います!

まず、いきなりオチを言ってしまいますが、、、

 

クリストファー・ロイド演じる殺人鬼ビルの正体はUMA!!

 

衝撃と、まさかすぎて笑える感じが「IT」のオチみたい!!!🐨

安いというか、最後だけすごいB級感なのが私の大好きな感じでした。

 

それとクリストファー・ロイドの演技って大袈裟なんですかね??その演技が、本当に身近にいる高齢のおじいちゃんっぽすぎて、大袈裟ぐらいが逆に自然で良すぎました!

ビルの肉体が朽ちていくのに抗う為、人を殺して臓器を交換していくのですが、脚を奪った後の演技がちょっと可愛くて微笑んでしまいました。歩きやすくなった脚で足踏みをして少しご機嫌そう、、可愛い、、殺して奪っているんですけどね🐨

 

マックス・レコーズの演技も注目です!彼が2011年の当時13歳だった3年前に、テストフィルムを撮っています。この頃に比べて、16歳の本作では無邪気さが消え去り、彼の美しい顔に作られる不気味な笑顔が本当に良いです。その笑顔は、「誰かを殺したいくらい腹が立った時は、笑顔で愛想よく振る舞う」というジョンの自分ルールなんですが、それが良い。怖い!!

中二病のようですが、目がガチすぎていじめっ子も退散します🐨

 

(こちらからテストフィルムが観れます〜🐨

目次

’’美少年’’M・レコーズが怪演「アイム・ノット・シリアルキラー 」テストフィルム入手

引用元:映画.com

 

あと最初にも書きましたが、この作品はそんなにグロいシーンもなく、びっくり驚く部分もなくて、ホラーが苦手な人も楽しめる作品だと思います!そこも魅力ですね。どちらかというと、サスペンス・SFよりかなと思います。

 

そしてなんと言ってもこの作品は、ソシオパスと言われ人に対して興味がなかったり、反社会的な部分があるジョンの心情の変化にも注目です。

 

ソシオパスって普段日常であまり聞かないですよね。

さらにジョンには連続殺人鬼の特徴があるらしく、どんなんやねん!と思いながら観ました🐨でもジョンが美しいから、ちょっと変わっているくらいでバランスが取れているのかなあと思ったり、、

 

連続殺人鬼には寝小便、火遊び、動物虐待の特徴があるらしいです。ジョンは動物を傷つける事が悪い事だと思わなかったと言っていましたが、気付かないだけでそういう人は周りにいるかもですね。

ジョンは葬儀屋という家業から常に死が身近で、両親の離婚があり家庭環境も良いとは言えず、そういった彼の幼い頃からの環境で、命や愛情などの普通とされている社会の感覚から遠ざかり、ソシオパスと診断される原因になったのかもしれません。

ジョンが「お前は誰だ」と自問自答しているシーンは、彼が自分でも気付かないうちに自身と周りの違いを感じ、悩んでいる事を表しています。ジョンのお母さんも息子を理解できないことに悩んでいました。

 

殺人鬼を通してですが、ジョンのように自身について、他者について、探求していく姿はとても魅力的でした!何かに夢中になって突き詰めると、今一番自分が求めている事への答えに繋がっていくんでしょうか。

 

ジョンの家庭環境があまり良くなかった点にも触れましたが、クリスマスプレゼントを開けるシーンでのお父さんからのプレゼント、あれは強烈でした!お父さんはジョンに、『俺たちの思い出の曲』と言いながら何も曲が入っていない音楽プレーヤー。ジョンのお姉さんには幼い頃一緒に見たのだろう子供番組のDVD。でした、、、ぞぞぞ!ですね!!

お姉さんは、子供の気持ちを考えずに昔の思い出が蘇る曲をプレゼントした事に怒っていました。しかしジョンは、音楽を入れ忘れていた事に対して怒っていたように感じたので、少しズレている感覚がお父さんと似ている、、?ソシオパスはお父さんからの遺伝??と思ってしまいました。

そんな強烈お父さんでしたが、私はそれ以上に鈍感すぎるジョンのお母さんが好きじゃありませんでした!ジョンの心の中に土足で入ってくるような感じが苦手です。もっと、心のソーシャルディスタンス!!!🐨

他の人物も、こういう人いる〜〜!という人間味が強いキャラが多いように思いますが、ジョンと差別化を図る意図でしょうか。軽いコメディくらいのキャラ達が多かったように思います。でもシーンにはしっかり緊張感があり、ジョンが際立っていました。

 

ジョンは、ビルに対し抑えられない興味と、周りと違うという親近感から、衝動的に自分の存在を知らせます。『I KNOW WHAT YOU ARE』(正体を知ってる)というメッセージでビルの反応を伺うのですが、どんどん弱るビルは、警戒しつつも次々に街の人を殺していきます。その様子を見て、ジョンは次第にビルの殺人を止めようとします。ジョンは殺人鬼を通して、感情や大切なもの、価値観を見つけていくのです。

 

ビルが、メッセージを読んで恐怖から1週間家に引き篭もった時、ジョンは「恐怖心って変だ。人は物事を怖がるけど、自分の行動は恐れない」とカウンセラーに話します。これってとても深いですよね。

ビルに向けた探究心からとんでもなく人の感情に敏感になってきている16歳のジョンは、そこらへんの大人より賢いのではないでしょうか。

「雪が積もった滑りやすい道は難なく歩き出すのに、行き交う車には注意をはらう」、人は誰かから何かをされるかもしれないという相手からの行為は恐怖するのです。犯罪でも日常でも言えますよね。興味深い🐨

 

その後ジョンが確実に犯罪者の道を外れた瞬間は、お母さんとの喧嘩で包丁を向けるシーンだと思います。一見、え!!!と思いますが、今までのジョンの「殺したくなるほど腹が立ったら笑顔で相手を褒める」という自分ルールも無くなり、包丁を母に向けている自分に気付くとすぐに包丁を捨てます。

これは殺人鬼のビルと同じ人間になりたくない、自分の行っている行為はダメな事だ、とジョンが理解した表れです。

その後もジョンがビルの奥さんを殴ってしまった時、すぐカウンセラーに電話し、おしまいだ、取り返しのつかない事をした、故意じゃないと話しています。一般的に映画などでよく見る反応です!ソシオパスと言われた、あの鈍感なジョンが、です!

ジョンはそこからは確実にビルの犯行を止めようとします。ジョンが殺人鬼の道を進まなくて良かったです!🐨

 

ビルが人を殺してもなお人であり続け、生きながらえようとする理由は妻への愛でした。ビルと奥さんが出会ったのは30代の頃で、彼女は’’人生を楽しむビル’’と一緒になりたいと思ったそうです。

40年前にアリゾナのエメットから顔や姿、人生を奪ったばかりのビルは人間になれて、人の生活を楽しんでいたのでしょうか。

 

妻はビルから「愛している、天国と地獄の何よりも」とプロポーズされ、ロマンチックだったと語っています。ビルは本当に天国と地獄を知っていそうですよね、、。

ジョンが図書室で調べていた悪魔の本には、ビルの本体そっくりの絵が載っているシーンがあります。やはりビルは真実を言っていたのかもしれません。そうだったら、考えられないほどの深い愛ですね。

ビルは臓器を交換する際は「地獄のような苦しみ」、死際の最期の言葉で「妻を頼む」と言っていますし、人を殺し続けてでもなお、生きながらえて妻の側にいたかったのだと思うと、本当に妻を愛していた事が分かります。

ビルの深い妻への愛から、愛と人の絆を知ったジョンは最後のシーンで相手の気持ちを考えられるように成長しました。

ビルの妻が語ったように、

 

もうこれまでとは違うのです。

 

 

〜詩の解説〜

 

「いかなる翼で求めたのか、

  いかなる手で炎を掴もうとしたのか

  虎よ、夜の森で赤々と燃える虎よ

  いかなる不滅の手や眼が恐ろしい均整を作ったのか」

「この詩人は虎に尋ねている

誰によっていかにして作られたかを、、、」

「子羊と虎という詩があるが、子羊は優しさからなり、虎は恐怖と死だ。」

 

このウィリアム・ブレイクの詩をビルが二回言う場面があるのですが、一回目はソシオパスと殺人鬼 対 一般人を意味していて、二回目ではUMA対人間を表しています。子羊と虎にそれぞれ当てはめる事ができますね。誰というのは神を表します。

 

「星々がその槍を投げ下ろし

  涙で天を濡らした時

  彼は己の作品を見て微笑んだか

  子羊を作り汝も作ったのか」

 

この詩は続きで一回しか言いませんが、彼というのも神です。殺人鬼やソシオパスの虎と、一般的な人の子羊は同じ神が作ったもの、つまり本質的には元は同じどちらにもなれる、というような事ではないでしょうか。ジョンが殺人鬼にもなり得たけれど、そうならなかったように、、ビルが生きようとしなければ殺人鬼にはならなかったように、、、。

そして、一回目は殺人鬼とソシオパス対一般的な社会的な人という内面、二回目ではUMA対人間という外見的な部分でも対比になっています。とっても面白い!UMAでも人間でも生きているという点では同じ生命という意味にもなりますね。

もう、難しすぎてむちゃくちゃ考えました!🐨

 

こんなに深いシーンやジョンの心情の変化を細かく描いているにも関わらず最後の最後はやっっすいCG!良すぎる、、、!!🐨

 

 

〜映像・こだわり〜

映像は鮮明でとても綺麗で、監督のこだわりから全篇16ミリフィルムで撮影しているそうです!

少し埃っぽい感じでくすんで、西部のアメリカのような色味でおしゃれですね。音楽も耳に残る、アメリカ映画のノスタルジックな感じでとても魅力的です!低予算ながら、音楽や映像にもこだわっているところが良いですね。

個人的に一番好きなのは、死体の防腐処理に使う液体のピンクをエンディングの背景にも使っていて好きでした。可愛いし、おしゃれ🐨

 

この作品は魅力たくさんな映画ですが、レビューなどが他であまり詳しく書かれていない印象があったの長めに書いてみました!

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!🐨